子供には関係ない

根気のないプロレタリアート。

私鉄・ド・ポエム。[五両目のカタストロフィ]

新宿へ向かう八両編成の私鉄、その五車両目に乗っていたのは自分。
と、トレンチコートのクール、かつビューティ、なお姉さん。
と、妙に背の低い五十代くらいの母親と、冴えない、けれどもおぼこくて何だかかわいらしい二十代くらいの娘。
と、ぽつぅんと一人で座っている、いかにも育ちの良さそうな眼鏡の男子小学生。
と、世の中のことわかってます風な三十代女性二人組。
と、諸々な面々。各々人々。
そんな取り合わせの車両。
皆それぞれ思い思いのスタイルで、好き勝手な感慨を抱えながら、一堂に、同じように列車に揺られている。
窓の外で次々と移り変わる景色、それを眺めたり、眺めなかったり。
流したり、流されたり。なだめたり、すかしたり。
そんな牧歌的な車両。
そこに乗り込んできたのはギターケースを担いだ、見るからに頭の弱そうな風貌の男。
もう少し具体的に描写すると、鼻ピアス、手の甲タトゥー、革ジャンパー、まあ所謂パンクファッションに身を包んで、唖呆みたいな顔で口を半開きにしてくっちゃり、くっちゃり、くっちゃり、とガムを噛んでいる。そんな男。


そうそう、やっぱりあれだよね。
真っ当なパンクスってのは知性的じゃないとダメなのよね。ルーリードとかみたいに。
なんて言いながら、目クソをほじって床に散らしている、そんな自分。



今、この列車内で慣性の法則が働いていないのは何故。
窓の外の景色が膠着してしまったのはいったい、何故。


急行列車の通過待ち。
だからだよ。
ほら、開きっぱなしのドアがさみぃだろ?