ブコウスキー:オールド・パンク 「作家は気づくのではなく、分かっているものさ」
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で、今がまさにその瞬間であり、仕方がないので、チャールズ・ブコウスキーのドキュメンタリー映画を見ている。
私はそもそも、ドキュメンタリー映画というものの良し悪しの評価基準がわからない。
ヤコペッティみたいなのは例外として(ドキュメンタリーと呼ぶべきかどうかも怪しいので)、ドキュメンタリーなんてその取り上げられているテーマに関心のある人間からしたら、どんなに撮り方がまずくても一見の価値はあるものだろうし、まったく興味のないテーマのものであれば、それはどんなに巧い撮影、編集であれ、楽しめないんじゃないのかしら。そういう意味では、部外者からも否応なく興味を惹かせるようなドキュメンタリーこそ、良いドキュメンタリーだと言えるのかもしれないが、別にここでそれを追究する気はない。
ともかく、この「ブコウスキー:オールド・パンク」という映画の出来は知らないけども、チャールズ・ブコウスキーのファンである私としたら、U2もショーン・ペンもどうでもよく、ブコウスキーが動いて喋っているだけで充分であるわけなのだ。チャールズ・ブコウスキーという人間のキュートな面がふんだんに堪能できる。
例えば序盤、あるインタビューで、「作家の才能に気づいたのはいつ?」と質問されると、
「作家とは気づくのではなく、分かっているものさ」と嘯くブコウスキー。
「じゃあ、いつ分かった?」と訊ね直されれば、
「たぶん13才くらいの頃うんたらかんたら……」とあっさり応えるブコウスキー。面倒くさいジジイである。はなから素直に答えろよ、と思ってしまうが、そんなところがキュートである。
ミッキーマウスの四本指の手に対する嫌悪感も同様、ひねくれ者の性癖を発揮している。
肌の繊細な彼は、決まった洗濯屋の洗剤でないと皮膚がかぶれてしまうのか、痒くなるのだそうだ。だからわざわざ遠くの洗濯屋へ自動車で通っている。それでいて「パンク」などと銘打たれているのである。キュートである。
彼のキュートさに触れて、私はなんとか原稿に向かう気分を盛り上げようと試みる。
チャールズ・ブコウスキーの作品のファンであれば、日々の生活に精神を擦り減らされてくたびれた時に、この映画はおすすめである。生活なんてどうでもよくなる。
「ブコウスキーの酔いどれ紀行」と「死をポケットに入れて」を先に読んでおくと、尚よく沁みること請け合いである。
- 作者: チャールズ・ブコウスキー,中川五郎
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