子供には関係ない

根気のないプロレタリアート。

ブコウスキー:オールド・パンク 「作家は気づくのではなく、分かっているものさ」

ブコウスキー:オールド・パンク [DVD]

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三月末の文学新人賞に応募するため、日々せっせと原稿を執筆しているこの頃なのだが、時間もたっぷりあって、アイディアにも困っているわけではない、それなのにどうにも原稿に向かう気分にならないときというのはあるもので、実に時間を浪費していると感じる。
で、今がまさにその瞬間であり、仕方がないので、チャールズ・ブコウスキードキュメンタリー映画を見ている。
私はそもそも、ドキュメンタリー映画というものの良し悪しの評価基準がわからない。
ヤコペッティみたいなのは例外として(ドキュメンタリーと呼ぶべきかどうかも怪しいので)、ドキュメンタリーなんてその取り上げられているテーマに関心のある人間からしたら、どんなに撮り方がまずくても一見の価値はあるものだろうし、まったく興味のないテーマのものであれば、それはどんなに巧い撮影、編集であれ、楽しめないんじゃないのかしら。そういう意味では、部外者からも否応なく興味を惹かせるようなドキュメンタリーこそ、良いドキュメンタリーだと言えるのかもしれないが、別にここでそれを追究する気はない。
ともかく、この「ブコウスキー:オールド・パンク」という映画の出来は知らないけども、チャールズ・ブコウスキーのファンである私としたら、U2ショーン・ペンもどうでもよく、ブコウスキーが動いて喋っているだけで充分であるわけなのだ。チャールズ・ブコウスキーという人間のキュートな面がふんだんに堪能できる。
例えば序盤、あるインタビューで、「作家の才能に気づいたのはいつ?」と質問されると、
「作家とは気づくのではなく、分かっているものさ」と嘯くブコウスキー
「じゃあ、いつ分かった?」と訊ね直されれば、
「たぶん13才くらいの頃うんたらかんたら……」とあっさり応えるブコウスキー。面倒くさいジジイである。はなから素直に答えろよ、と思ってしまうが、そんなところがキュートである。
ミッキーマウスの四本指の手に対する嫌悪感も同様、ひねくれ者の性癖を発揮している。
肌の繊細な彼は、決まった洗濯屋の洗剤でないと皮膚がかぶれてしまうのか、痒くなるのだそうだ。だからわざわざ遠くの洗濯屋へ自動車で通っている。それでいて「パンク」などと銘打たれているのである。キュートである。
彼のキュートさに触れて、私はなんとか原稿に向かう気分を盛り上げようと試みる。
チャールズ・ブコウスキーの作品のファンであれば、日々の生活に精神を擦り減らされてくたびれた時に、この映画はおすすめである。生活なんてどうでもよくなる。
ブコウスキーの酔いどれ紀行」と「死をポケットに入れて」を先に読んでおくと、尚よく沁みること請け合いである。
ブコウスキーの酔いどれ紀行 (河出文庫)

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死をポケットに入れて (河出文庫)

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